#010 ロッカー室での詮索

あれから何度か、2人はシフトが重なった。

バイト終わり、今日もロッカー室で着替えながら、短い会話をする。

「なぁ。郁人って、彼女とか好きな人いねーの?」

「……いない」

少しだけ間があった気がした。

気のせいかと思いながら、

「あ、そう」

と軽く返す。

「この前、お前がバイトいないとき聞かれたぞ。
 彼女いるかって」

「知らないって答えといて」

淡々とした声。

いつも通りの距離。

「彼女とか作る気ないの?」

問いを重ねると、

郁人は答えないまま、少し考え込んでいるように見えた。

「弘樹こそ、どうなんだよ?
 高校のときだってバレンタインすごかったし、今だってモテるだろ」

話を逸らされる。

「今はフリーだよ」

そう言うと、

「ふーん」

興味なさそうな返事。

その一言が、やけにあっさりしていて。

さっきの“間”も含めて、

何かを隠しているような

——そんな違和感だけが、胸に残る。

弘樹は、それが何となくムカついた。

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