翌日、弘樹にとっては二日目のバイト。
慣れている仕事だけあって、動きはスムーズだ。
気づけば、昨日よりも余裕が出ていた。
その日も、郁人と同じタイミングで上がる。
ロッカー室で着替えながら、なんとなく会話が続いた。
「郁人、明日も入ってんの?」
「……入ってる」
短い返事。
「おまえ、バイト入れすぎじゃね?」
「一人暮らしだし」
淡々とした声。
それ以上は言わない、という線引き。
「そっか」
軽く返しながら、弘樹は少しだけ郁人を見る。
「……無理すんなよ」
ふいに出た言葉に、郁人の手が止まった。
「え…」
意外そうに顔を上げる。
「いや、なんかさ」
弘樹は言葉を選ぶように続ける、
「昔から、弱音とか言わないじゃん。
今日も、ちょっと疲れてる顔してるし」
何気ない口調。
けれど視線は、まっすぐだった。
「……マジか」
郁人は苦笑する。
「俺、そんな顔してんだ。笑えねー」
その言い方が、どこか自嘲気味で。
「してるしてる」
思わず、弘樹は笑った。
その空気に、郁人もほんの少しだけ息を抜く。
「……お前、変なとこだけ昔のままだな」 と呟いた。
弘樹は「なにそれ」と笑う。
ロッカー室の狭い空間に、 懐かしい空気が静かに広がっていた。


