#009 2度目の出勤

翌日、弘樹にとっては二日目のバイト。

慣れている仕事だけあって、動きはスムーズだ。

気づけば、昨日よりも余裕が出ていた。

その日も、郁人と同じタイミングで上がる。

ロッカー室で着替えながら、なんとなく会話が続いた。

「郁人、明日も入ってんの?」

「……入ってる」

短い返事。

「おまえ、バイト入れすぎじゃね?」

「一人暮らしだし」

淡々とした声。

それ以上は言わない、という線引き。

「そっか」

軽く返しながら、弘樹は少しだけ郁人を見る。

「……無理すんなよ」

ふいに出た言葉に、郁人の手が止まった。

「え…」

意外そうに顔を上げる。

「いや、なんかさ」

弘樹は言葉を選ぶように続ける、

「昔から、弱音とか言わないじゃん。
 今日も、ちょっと疲れてる顔してるし」

何気ない口調。

けれど視線は、まっすぐだった。

「……マジか」

郁人は苦笑する。

「俺、そんな顔してんだ。笑えねー」

その言い方が、どこか自嘲気味で。

「してるしてる」

思わず、弘樹は笑った。

その空気に、郁人もほんの少しだけ息を抜く。

「……お前、変なとこだけ昔のままだな」 と呟いた。

弘樹は「なにそれ」と笑う。

ロッカー室の狭い空間に、 懐かしい空気が静かに広がっていた。

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