
あれから何度か、2人はシフトが重なった。
バイト終わり、今日もロッカー室で着替えながら、短い会話をする。
「なぁ。郁人って、彼女とか好きな人いねーの?」
「……いない」
少しだけ間があった気がした。
気のせいかと思いながら、
「あ、そう」
と軽く返す。
「この前、お前がバイトいないとき聞かれたぞ。
彼女いるかって」
「知らないって答えといて」
淡々とした声。
いつも通りの距離。
「彼女とか作る気ないの?」
問いを重ねると、
郁人は答えないまま、少し考え込んでいるように見えた。
「弘樹こそ、どうなんだよ?
高校のときだってバレンタインすごかったし、今だってモテるだろ」
話を逸らされる。
「今はフリーだよ」
そう言うと、
「ふーん」
興味なさそうな返事。
その一言が、やけにあっさりしていて。
さっきの“間”も含めて、
何かを隠しているような
——そんな違和感だけが、胸に残る。
弘樹は、それが何となくムカついた。

