講義が終わり、学生たちが次々と教室を出ていく。
陸もノートをバッグにしまっていた、
ーーそのときだった。
「りく」
名前を呼ばれて振り向くと、ハルがいつもの柔らかな笑顔を向けていた。
「このあと、時間ある?」
「え……はい、大丈夫です」
「もう少し話さない?」
その言葉に、陸の胸がふわっと浮き立つ。
断る理由なんて、もちろんない。
二人は講義棟を出て、中庭のベンチへ向かった。
「陸は、実家から通っているの?」
ハルが先に口を開く。
「はい。うちから1時間ほどです。」
「そっか。朝の通勤ラッシュは大丈夫?」
「あんまり……人の多さに圧倒されます。」
正直に答えると、ハルはくすっと笑った。
「だよね。俺も1年の時は通勤してたから。
大変さわかる。」
そう言って笑う横顔を見て、陸は胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。
それから二人は、少しずつ自分のことを話した。
陸は地元のこと、家族のこと。
ハルは卒業後の進路や、大学生活で悩んだこと。
「陸って、ちゃんと人の話聞いてくれるよね」
ふいにハルがそう言った。
「え……」
「話しやすい」
その言葉に、胸がどきっと跳ねる。

「そろそろ帰るか」
ハルが立ち上がる。
「…はい」
並んで歩き出しながら、陸はそっと思う。
——もっと、ハルさんと話していたい。

