講義のある朝
陸のスマホが、小さく震えた。
表示された名前を見て、思わず息が止まる。
「ハル」
震える指でトークを開く。
『隣の席、とっておいてもらっていい?』
短い一文だった。
それだけなのに、胸の奥が一気に温かくなる。
——また隣に座れるんだ。
自然と顔がほころぶ。
「はい、取っておきます」
送信ボタンを押す指は、前よりも軽かった。
講義室に着くと、陸は同じ席に座り、隣を空けておく。
そこにハルがやってきて、嬉しそうに笑った。
「ありがとう、助かった」
「いえ…」
並んで座ると、不思議と落ち着く。
前よりも会話は増えていた。
講義の内容のこと、ちょっとした雑談、たわいもない話。
「陸ってさ、実はおしゃべりだよね。」
「そうですか?」
「うん。迷惑だったかな?って少し不安だったから。嬉しいよ。」
その言葉に、胸がふっと軽くなる。


