
カフェの営業が終わり、店内はようやく静けさを取り戻した。
「ふー……思ったより忙しいな」
弘樹はエプロンを外しながら、大きく息を吐く。
その様子を横目で見ていた郁人が、ふと口を開いた。
「……てか、なんでここ選んだの」
何気ない調子だった。
弘樹は「んー」と少し考えてから笑う。
「就活終わったし、ゼミもゆるいしさ。時間余ってて。
またカフェで働こうかなって思って応募したら、受かった」
「あっそ」
そっけない返事。
けれど弘樹は気にした様子もなく、そのまま続ける。
「まあ、郁人がいるとは思わなかったけど」
そう言って、弘樹は楽しそうに笑った。
「でも、めっちゃ嬉しいわ。またこうやって会えんの」
まっすぐな声だった。
郁人は視線を逸らす。
昔から、弘樹はこういうことを平気で口にする。
変に気を遣ったり、遠回しにしたりしない。
だから調子が狂う。
「……そうだな」
小さく返すと、弘樹がふっと笑った気配がした。
「郁人、明日もバイト?」
「そう」
「じゃあ、また一緒だな」
嬉しそうに言われて、郁人はほんの少しだけ言葉に詰まる。
「……だな」

