#005 バイト終わり

カフェの営業が終わり、店内はようやく静けさを取り戻した。

「ふー……思ったより忙しいな」

弘樹はエプロンを外しながら、大きく息を吐く。

その様子を横目で見ていた郁人が、ふと口を開いた。

「……てか、なんでここ選んだの」

何気ない調子だった。

弘樹は「んー」と少し考えてから笑う。

「就活終わったし、ゼミもゆるいしさ。時間余ってて。

 またカフェで働こうかなって思って応募したら、受かった」

「あっそ」

そっけない返事。

けれど弘樹は気にした様子もなく、そのまま続ける。

「まあ、郁人がいるとは思わなかったけど」

そう言って、弘樹は楽しそうに笑った。

「でも、めっちゃ嬉しいわ。またこうやって会えんの」

まっすぐな声だった。

郁人は視線を逸らす。

昔から、弘樹はこういうことを平気で口にする。

変に気を遣ったり、遠回しにしたりしない。

だから調子が狂う。

「……そうだな」

小さく返すと、弘樹がふっと笑った気配がした。

「郁人、明日もバイト?」

「そう」

「じゃあ、また一緒だな」

嬉しそうに言われて、郁人はほんの少しだけ言葉に詰まる。

「……だな」

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