
ガチャ、と開けた瞬間——
視界に入った顔に、思考が止まった。
「……いくと?」
気づけば、名前が出ていた。
少し伸びた黒髪
抑えた表情
変わらない雰囲気
一瞬で、記憶と重なる。
呼ばれた相手も、同じように動きを止めている。
「やっぱり、弘樹だったか…」
その声で、確信に変わる。
「うわ、やっぱり郁人じゃん。久しぶりすぎだろ」
自然と笑みがこぼれる。
「郁人、なんでここにいるんだよ?」
「ずっと前から働いてる」
返ってきた声は、どこか面倒そうで。
表情も、あからさまに歓迎している様子はない。
「え、なにその顔。嫌そうじゃん?」
からかうように笑いながら聞くと、
「嫌だよ」
あっさりと、はっきり返される。
「まあまあ、そう言うなって」
軽く肩をすくめて、
「今日からよろしくな、いくと先輩」
わざとらしくそう言ってみせる。
郁人は、ほんの少しだけ困ったように眉を寄せた。
その反応に、弘樹はふっと笑う。
——ああ、この感じ。
昔から、
郁人はこうやって困らせると面白かった。


