
水たまりを踏んで、さらに濡れる。
「郁人の負け確定」
「勝手に決めんな」
くだらないやり取りが、自然と続く。
気づけば、服も髪もすっかり濡れていた。
「……びしょびしょだな」
「だな」
息を整えて、ふと顔を見合わせる。
その瞬間、小さく、笑いがこぼれた。
「こういうの、なんか久しぶりだな」
弘樹が笑いながら覗き込む。
「こんなくだらないこと、久々にしたわ」
郁人は最悪という顔をしている。
「はは、たしかに」
そう言いながら弘樹が笑う。
続けて弘樹は言う。
「高校のときもさ、みんなで走ったよな。
雷の中、無駄にテンション上がってさ」
「……あったな」
その後も、駅で別れるまで、
2人は高校の時の話をしていた。
くだらないのに、やけに楽しかった時間を
2人は思い出していた。
