
弘樹のことは、別に嫌いじゃない。
高校の頃はよく一緒にいたし、あいつといる時間はそれなりに楽しかった。
……ただ。
知り合いと働くのは、あまり好きじゃなかった。
バイト中の自分を見られるのが、
なんとなく落ち着かない。
普段なら誰にも気にされないようなことまで、
弘樹には見透かされそうな気がするから。
昔からあいつは、人の懐に入るのがうまかった。
距離が近くて、遠慮がなくて。
だからこそ、調子が狂う。
「え、なにその顔。嫌そうじゃん?」
からかうように笑う声も、昔と変わらない。
「嫌だよ」
そう返したのに、弘樹は全然気にした様子もなく笑っていた。
「今日からよろしくな、いくと先輩」
わざとらしい呼び方に、思わず眉が寄る。
……けど。
その声を聞いた瞬間、少しだけ肩の力が抜けた。
三年ぶりのはずなのに、
弘樹と話していると、不思議なくらい昔の空気に戻る。
——まあ。
弘樹となら、一緒に働くのも悪くないかもしれない。

