
大学四年の春。
八木澤弘樹(やぎさわひろき)は、就活もひと段落して、時間がぽっかり空いていた。
家でダラダラしてるのは性に合わない。
そんなときに見つけたカフェの求人に、軽い気持ちで応募した。
——結果は合格。
そして今日が、初出勤だ。
店に着くと、店長から簡単な説明を受け、そのままロッカー室へ案内される。
制服に着替えながら、ふと息を吐いた。
バイトには慣れている。
接客も嫌いじゃないし、似たような店での経験もある。
——それでも。
「……ちょっと緊張するな」
着替えを終え、ロッカーの扉を閉めた。
もう一度、深く息を吐き、
そのままドアに手をかける。
ガチャ、と開けた瞬間——
視界に入った顔に、思考が止まった。
「え…」


