#001 再会の予感

大学四年の春。

瀬谷郁人(せやいくと)は、空いた時間をほとんどバイトに充てていた。

このカフェで働き始めて、もう三年。

気づけば新人に仕事を教える側になっていた。

カウンターの中で準備をしていると、店長が声をかけてくる。

「瀬谷くん、今日さ。15時に新人入るんだけど、見てもらっていい?」

「はい」

短く返す。

いつも通り、感情の乗らない声。

「やぎさわ君って子なんだけど」

——やぎさわ。

その苗字に、手が一瞬だけ止まる。

「……店長、その人、いくつですか?」

何気ないふりをして聞く。

「ん?あー、大学四年って言ってたな。お前と同い年じゃないか?」

「……そうっすね」

軽く頷く。

同い年、
やぎさわ…

頭の中に、ひとりの男の顔が浮かぶ。

高校の時の同級生に、同じ名前のやつがいた…

明るくて、

人の懐にはいるのがうまくて、

距離の近かった——

「……まさか」

そう思いながらも、時計の針が15時に近づくほど、妙に落ち着かなかった。

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