この春大学1年生になった、陸(りく)。
大講義室の空気に、陸はまだ慣れていなかった。

人の多さ、ざわめき、知らない顔ばかりの空間。
——ちゃんとやっていけるかな。
そんな不安が、胸の奥にじんわり広がっていた。
「……あの、隣いいですか?」
不意に声をかけられて、りくはハッと顔を上げる。
「あ、はい…!」
少し慌てて答えると、彼は「ありがとう」と言って隣に座った。

講義が始まって少し経った頃、また小さな声が届く。
「1年生?」
驚いて振り向くと、隣の彼がこちらを見ていた。
「は、はい…」
陸が答えると、彼は、くすっと優しく笑った。
「やっぱり。ちょっと緊張してる感じする」
見抜かれて、陸は言葉に詰まる。
「大丈夫、そのうち慣れるよ」
その一言が、不思議と胸にすっと入ってきた。
「俺は、はるひこ。4年。
ハルさんって呼んでくれればいいから。」
「俺は陸、です」
気づけば、自然と会話が続いていた。
さっきまでの緊張が解けていく。
講義が終わる頃、ハルがスマホを取り出す。
「よかったら、連絡先交換しない?」
不意をつかれた陸は、少し戸惑い、
そのあと小さく頷いた。
「はい」
画面に追加された名前を見て、
胸が少しだけ高鳴る。
——大学で、初めてできた先輩…。
それが、ハルさんで良かった
