#001 はじめて隣に座った日

この春大学1年生になった、陸(りく)。

大講義室の空気に、陸はまだ慣れていなかった。


人の多さ、ざわめき、知らない顔ばかりの空間。

——ちゃんとやっていけるかな。

そんな不安が、胸の奥にじんわり広がっていた。

「……あの、隣いいですか?」

不意に声をかけられて、りくはハッと顔を上げる。

「あ、はい…!」

少し慌てて答えると、彼は「ありがとう」と言って隣に座った。

講義が始まって少し経った頃、また小さな声が届く。

「1年生?」

驚いて振り向くと、隣の彼がこちらを見ていた。

「は、はい…」

陸が答えると、彼は、くすっと優しく笑った。

「やっぱり。ちょっと緊張してる感じする」

見抜かれて、陸は言葉に詰まる。

「大丈夫、そのうち慣れるよ」

その一言が、不思議と胸にすっと入ってきた。

「俺は、はるひこ。4年。
 ハルさんって呼んでくれればいいから。」

「俺は陸、です」

気づけば、自然と会話が続いていた。

さっきまでの緊張が解けていく。

講義が終わる頃、ハルがスマホを取り出す。

「よかったら、連絡先交換しない?」

不意をつかれた陸は、少し戸惑い、

そのあと小さく頷いた。

「はい」

画面に追加された名前を見て、
胸が少しだけ高鳴る。

——大学で、初めてできた先輩…。

それが、ハルさんで良かった

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